背景と課題
地域の現場から聞こえる声
- 「目の前の困っている人、私たちだけじゃうまく支援できないかも…」
- 「いろんな専門性をもった団体と日ごろから顔の見える関係があれば、もっとスムーズに支援ができるのに…」
- 「一緒に地域で活動できる人たちとのネットワークが欲しい!」
地域課題の複雑化・複合化が進む中、多様な主体(社会福祉協議会・NPO・ボランティア団体・個人など)の連携が不可欠になっています。しかし、地域の支援団体同士が互いの存在を知らず、「顔の見える関係」ができていないことが多くの地域で共通の課題でした。
プロジェクトの目的
目的:地域資源同士がつながるネットワークづくり
- › LLM(大規模言語モデル)等のAI・情報技術を活用し、インターネット上から「地域資源」候補を自動発掘して「地域資源データベース」を構築する
- › 発掘した「地域資源」が参加するリアルイベントを開催し、顔の見える関係を構築する
- › AIはあくまで「手段」であり、抽出→調査・ヒアリング→データベース→関係づくりという人間中心のプロセスを重視
プロジェクトチーム構成
名古屋市中区社会福祉協議会
- プロジェクトの企画・推進
- 地域福祉に関する知見の活用
- 地域団体・ネットワークとの連携
名古屋工業大学 白松研究室
- LLM等情報技術の活用に関する実施・助言
- 地域資源採掘システムの開発
- AIチャットボット・マッチングシステム開発
ボラみみより情報局
- プロジェクトの企画・推進
- 地域福祉に関する知見の活用
- ボランティア情報の収集・発信
地域資源採掘システム
LLMを活用してWebおよびSNS上の情報から地域の支援団体・組織を自動的に発掘・整理するシステムを開発しました。
検索語の生成
背景情報(重層支援に関する資料など)をもとに、GPT-4oが自動で検索クエリを生成。「名古屋市中区 支援団体 ○○支援」など10件の検索語を生成します。
Web検索・URL収集
Google Search API(Grounding)を活用して、検索語に対応するURLを収集。Facebook・Instagram・X・YouTube・Noteなどのドメイン指定検索も実施。
固有名詞・団体情報の抽出
LLM(GPT-4o)が収集したページから団体名・施設名を抽出。複数のURLを参照することで情報精度を向上させる設計を採用。
情報抽出・評価・タグ付け
団体の活動内容・連絡先・特徴を抽出し、「支援内容タグ」と「支援対象タグ」を分けてAIが付与。AUC=0.83の識別性能を達成し、地域資源データベースとして活用可能な形で出力。
支援団体情報
団体情報件数
AUC識別性能
ターニングポイント:AIの新たな可能性
地域団体へのヒアリングを通じて、外国人支援NPOが「外国人相談ガイド」という充実したノウハウ集を持っていることが判明。しかし、必要なときに必要な情報にたどり着くまでに手間がかかる課題がありました。
AIは「資源を探す」ためだけでなく、「ノウハウを活かす」ためにも使えるのではないか——という新しい可能性に気付きました。
開発したAIシステム
AskHow
困窮者支援団体などケアワーカーのノウハウを対話形式で聞き取り、知識グラフとして蓄積・共有するシステム。NPO・支援団体が持つ暗黙知を形式知化し、地域全体でノウハウを活かせる仕組みを実現。
(Net Promoter Score)
6点以上の回答割合
ボラみみ助け合いマッチング助手
地域資源データベースと連携し、支援のアイデアや困りごとを入力すると、関連する団体・活動とのマッチング提案を行うAIチャットボット。地域の助け合いネットワーク構築をAIが支援。
(Net Promoter Score)
6点以上の回答割合
※ NPS +30以上が「優れている」とされる指標。2026年1月31日「AI・地球博」での7件法評価より。
主なイベント・活動記録
「居場所でつながるひとづくり」交流会
中区在宅サービスセンターにて開催。事例発表・パネルディスカッション・全体交流会を実施し、地域団体同士の顔の見える関係づくりを推進。
子どもの支援に関する連絡会
中区在宅サービスセンターにて開催。実践報告・関係機関の発表・グループワークを実施。
勉強会「AIを活用したノウハウの共有」
名古屋YWCA ビッグスペースにて開催。NPO法人外国人ヘルプライン東海 後藤美樹氏の講演とAIチャットボット体験ワークショップを実施。ノウハウ共有による地域ネットワーク構築の可能性を参加者と探求しました。
成果報告 & 体験ワーク「AIでつなぐ地域助け合いネットワーク」
中区在宅サービスセンターにて成果報告とAIチャットボット体験を実施。
最終報告会 & 未来共創イベント「AI・地球博」
名古屋工業大学 Nitec Hall 2階 EPSON STUDIOにて開催。白松教授の基調講演「AI×地域の未来」、2年間のプロジェクト成果発表、最新AIチャットボット・マッチングシステム体験を実施。愛・地球博から20年の節目に「AIがつむぐ地域助け合いネットワーク」をテーマに市民・団体が集いました。
プロジェクトを通じて得られた知見
SNSが地域活動の主要発信源
新しい活動や小規模な取り組みの情報はSNSにしか存在しないケースが多い。しかし近年のSNSは自動的な情報抽出を制限する傾向にあり、技術的・制度的な対応が必要。
タグ設計が重要
活動の性質をLLMに判定させるには「支援内容タグ」と「支援対象タグ」を分けるなど、タグ設計の工夫が精度向上に大きく貢献。
体験することで理解が進む
チャットボットを実際に触ることで初めて参加者に具体的な活用イメージが生まれる。「触れる機会を作ること」が普及の鍵。
ノウハウ共有へのニーズ
「ベテラン支援員の知識を形式化・共有したい」「自団体だけでは解決できない課題を相談し合いたい」というニーズが明確に。AIはこの橋渡し役になれる。
プロジェクトの成果
(AI・地球博アンケート26件 + 別途意思表明15件)
(+30以上が「優れている」とされる)
結論
AIを活用した助け合いネットワークの基盤づくり
生成AIの活用によってこれまで接点のなかった団体・活動の発見と、各団体が持つノウハウの可視化・形式知化と共有——この2つの組み合わせで地域助け合いネットワークを育てられることが証明されました。
今後の展望
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助成終了後も試作したチャットボットの改良を重ね、外国人支援の行政機関・NPOでの実装につなげていく。現場からのニーズは明確に確認されている。
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将来的にはノウハウの蓄積・共有からの収益モデルを構築し、地域助け合いネットワークの持続的な運営を支える財源にすることを検討。
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名古屋市中区での成果をモデルとして、他地域・他自治体への展開を検討。「社会の結び目としてのAI」という株式会社ソシアノッターのビジョンを地域福祉領域で実証し続けていく。